c71の一日

生活の記録

あなたの孤独はあなたの孤独

あなたの孤独を理解するものはいない。
あなたの孤独はあなたのものだから。



あなたは、過去をさかのぼることも、前向きになって今を変えることも出来ないと嘆くけれど、死ぬことも出来ず生きている理由も分からず生きている。


誰かに問いたいと思う。
「生きている理由は何なのですか?」
「死ねないからだ」
「生きていて楽しいからだ」
「未知のものがあるからだ」と答えられて、真っ暗な絶望に届かない光の遠さに、気が遠くなっていく。

ああ、やっぱりこの孤独は誰にも癒されない。きっと同じような人はいるのだろうけれど、わたしたちはふれあわない。
恒星と恒星の距離のように、どれだけ燃えていても、真っ暗な中で光は虚しく吸収されていく。先端の光が、届く頃には、お互いが消滅しているほどの距離を縮めることなんて思いもつかない。




ああ、幸せだなと思うことはあるけれども、世間的な基準に全く達していない自分に気づく。

結婚していない、正社員ではない、休日がない、お金がない…。
恋人がいない、友だちが少ない、経験が少ない…。
愛に恵まれていない。


年を取り、限界を知って、元気を失って、上の階層に行けることもないと知っていく。知ることが増えれば増えるほどあきらめることも多い日々で、それよりも疲れていく。



わたしが勉強を好むのは、必ず発見があって、静かなところ。
静かな優しい場所だから、勉強が好きだ。ときどき、天井に穴があいて、光が降りてくるような気がする。
そこから、わたしはふっと浮き上がって、新しい場所に行ける。
実際に、今まで自分に無理だと思っていた環境に移動できることもある。学校に行けたり、転職できたり。
自分にとっては当たり前すぎて誇ることも出来ないスキルが評価されたりもする。
それは勉強なしでも、もっていたものだけど、勉強をしていると、その力に補強される気がする。
新しいものや古いものに触れていると自分の孤独が癒される。
同じような孤独な人たちが過去にいて、本を書いて、文章でわたしと向き合ってくれている気がするから。


世の中の人は忙しくて、わたしの話を聞いている暇がない。わたしは世の中の人の価値観に傷つけられることも多いので、なかなか話し相手を選ぶ。でも、本の中では、わたしは自由に考え、話し合い、議論の行く末を見守ることができる。
わたしはそうやって自分の孤独を癒すために、一人になる。
一人でいるときには、誰かと比べないから、孤独ではない。



わたしはあなたの孤独を癒したいと思う。
癒したいと思うが、癒せないとも思う。
わたしにはそんな力もないのだとうつむきたくなる。
だけど、やっぱり、わたしは文章を読んで、過酷な子ども時代を乗り切って、その後もずっと文章に癒され続けて来たから、文章を書いて、恩返しをしたいのだと思う。


親切と親切の交換、優しさと優しさの交換をすると、心がぱんぱんにならないですむ。
親切にされすぎると、自分が惨めになる。親切にされたのに惨めになる自分を責める。
施しを受けるようでいやだ、でも、そんなふうにプライドを傷つけられる自分も傲慢でいやだと。



あなたは自分が落伍したと知っている。これはハリボテの幸せで、うらやましいと言われるけれど、自分の気持ちは違うのだ。
それを否定されたくない。そして、内実を知られたらきっと笑われるだろう。
知られたいけれど、知られたくない。そう……、分かってくれる人とだけ、分かち合いたい。



あなたはそう願うけれど、身近な人ほど忙しくて、毎日の戦いに流れていく月日が、心を荒らしていく。



わたしはこの人生で何もなしていないと思う。惨めだと思う。何も積み重ねていないし、得てもいない。
楽しくもない。つらい。疲れた。悲しい。


何のために生きているのだろう、と。生まれたこと自体が間違っていたのだと。



わたしはあなたへの励ます言葉を持たない。
何一つない。
わたしは幸せだけれど、同時に、世間の幸せの基準を満たしていないさみしさがあるから。
ときどき死にたくもなるから。脳のバランスが乱れて、おかしな気持ちになる。薬で調整している。人のことは言えない。
それに、わたしが幸せだからと言ってなんだろう、わたしの幸せが誰かを幸せにできるのか、とも思う。



そう……、でも、わたしがわたしらしく幸せであることで、誰かを幸せにできることはあるかもしれない。そう思い直す。
わたしは自分の知り合いに死んでほしくないし、できれば楽しそうでいてほしい。そうすると、ほんのり幸せになる。
知っている人に世話を焼いたり、おせっかいを言ったりもする。距離が分からないので、侵入し過ぎになることもあるのだと思うけれど、相手にその都度聞いたり謝ったりしている。



わたしにできるのは、あなたの孤独はあなたの孤独なのだ、と尊重することだ。
わたしにはなにもできないと認めることだ。
わたしたちが、いつか消滅したあと、残った光同士が、出会うこともあるかもしれないと願うだけだ。



わたしの孤独はわたしの孤独。
これは尊いことだ。素晴らしいことだ。誰にも侵入されない。静かな世界。穏やかで、安らぐ世界。自由な世界。制限のない世界。
わたしの孤独はわたしの孤独。
あなたの孤独はあなたの孤独。


そう願うと、空洞で光のない胸の中に星が落ちていくような気がした。

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