c71の一日

生活の記録

自分を抑えること

わたしの母は、わたしを殴ってから抱きしめるような人だった。
わたしは情緒が不安定になった。

殴ってから謝るのプロセスを経ると、心身ともに依存するようになる。
ものすごくコントロールされるようになる。
わたしはずっと母親に同情していたし、かわいそうだと思っており、離れられなかった。
あるとき、母が「どうぞご勝手に」とわたしに言い、そのあと「愛してるの」と言ったことがある。
それ以来、母と縁を切ることができた。たいへん寒気がしたし、そこから逃げ続けるのは容易なことではない。
だけど、回復すると思う。

わたしはそういうわけで、正常な愛情と言うものを知らない。
映画や本で学ぶしかない。

今は、中学生を教える仕事をしている。
こういうことがあった。
数学を教えているとき、「これは、これは?」「これくらいできるでしょ」という風に追いまくってしまったことがあった。
自分が止められない感じだった。
生徒は萎縮し、解ける問題も解けなかった。

そのあとわたしは謝った。

その話を精神科医にした。
「謝ると言うところが、お母さんと同じですよね」と言われた。
「完全に無意識でした。怖いですね」と答えた。
「生徒さんは様子が変わった?」
「変わりました」
「どうしてそういうことが起きたかわかる?」
「わたしの期待していた理解度と、生徒の理解度がミスマッチを起こしていたので、より易しい段階に戻すことで解決しました」
「殴ってから謝ると言うのが原風景なわけですよね」
「はい」
「家の外に世界を持つことが大切だと思います」
「わたしにとって、初めての世界とは、病院だったと思います」
「そうですか。とにかく、回復して行くものだと思います。必ず乗り越えられます。お母さんと同じにはならない。お母さんをかわいそうに思うことがあっても、それはそっちでやってもらう、あなたはあなたの戦いをやる、そういうことです」
「自分を抑えることが大切ですね」
「そうです」