c71の一日

生活の記録

正社員じゃないけれど

http://anond.hatelabo.jp/touch/20130306163244

病気をして、正社員じゃなくなったけれど、わたしは就職活動をしているときよりずっと幸せだ。

就職活動をしているとき、あんなに切羽詰まっていたことを思い出した。
あのときの気分は、今の就職活動をしていた人にしか、わからないかもしれない。

答えの定まっていないクイズをしているような気分になる。
どこに正解があるのかもわからない、正解があると考える方が間違ってる、その通り、と思って、わたしも死のうかと思った。
京都の企業を受けにいって、あまりにもつらいので、三十三間堂から、主治医に電話をして、「死にたい」と言った。
飛び降りたいと。でも、やっぱり、死ななかった。

元気なときには、否定されても、次にいける。でも、ぼろぼろになってると、ノーに対する耐性がなくなる。

当意即妙な返答もできなかったし、企業の利益になるような志望動機も言えなかった。とにかく惨めで仕方がなかった。

手前味噌だけれど、わたしが入った会社には、「お金を稼ぐために働きます。だから、一生懸命がんばります」と言った。
「どうして?」
「たくさん人よりも勉強にお金を使ったからです」と答えた。
「どうしてうちなの」
「勉強したことをそのまま御社の役に立てることができると考えたからです」
最後にはシンプルになった。
でも、そこだって、落ちていたかもしれない。たまたまうまくいっただけだ。落ちていたら、就職活動を続けていたと思う。
どれが正解かだなんてこともなかった。
単に運だったと思う。

なんとか就職したとき、夢じゃないかと思った。上は、Go◎gleの面接を受けた(面白い経験だったので自慢したい)し、大企業の最終面接にも行った。決まったのは小さな会社だった。
決まるまではあまりにもつらくて、当時の記憶はあまりない。

わたしは、せっかく入った会社を長くつとめることはなく辞めた。
今の仕事は、正社員じゃないけれど、気に入っている。

昼間が空いているから、医者に行くことも可能だし、手に職をつける系の仕事だから、将来起業することもできる。
昼間の時間を利用して、資格を取ることもできる。
いろいろ考えられる。
ブラック産業と言われていることを、あとから知ったけれど、人間関係も良くて、正社員だったときよりも、幸せな気持ちだ。

退職金もないし、休業補償もないし、厚生年金もない。長期休暇も有給もないし、病気になっても休めない。
だけど、仕事はとても面白くて、わたしの替えはいないと思える。

わたしが就いた仕事を誰にでも勧めるわけじゃないけれど、新卒カードを持っていたとき、「正社員だけが職業じゃないよ」と言われてピンとこなかった気持ちを思い出した。
ズタボロになってないと思っていたプライドの違う部分、視野が狭くなっていて、新卒カードをうまく使わないといけないと思い込む強迫観念みたいなのがあった。

わたしはエリートになるもんとばかり、自分のことを思っていたけれど、まあ、そうじゃなかった。それが生きづらかった。
障害者手帳を持って、「ああ、わたしは障害があって、できることとできないことの範囲がある」ということを、目で見ることができた。触ることもできた。
それは、とっても良い経験だ。

楽なこと、気分がいいこと、楽しいことをするのには、勇気がいった。
それだけをしようと決めた。それが治療だったから。
堕落しそうで怖かった。
それに、将来のことに備えることが、今まで当然すぎて、好きなことだけするとどうなってしまうのか、不安だった。
でも、楽しいこと、楽なこと、好きなことだけをしたら、自分に合う仕事が見つかった。
無理をしないと仕事にありつけないと思っていた。安心して、楽なことを今までできていなかったんだな、と思った。
わたしは運が良くて、安心して、「好きなことだけ一度やってみる環境」をぽんと与えられた。
それは、病気になるまでチャレンジしてみようとは思えない分野だった。

好きなことだけやると、のびのびして、自由に、思いついたようにできる。それに、努力も簡単にできる。苦しくない。ちょっと頑張ったことがすぐに成果になるから面白い。
前の仕事にいたときは、どれだけ頑張っても成果にならなかったからつらかった。
向いてなかったと思う。

正社員ではないけれど、向いている仕事に就くという幸せがあることを知った。
これから先もうまく行くとは限らない。うまくいかない可能性の方が高い。
高いけど、今幸せだ。