決断するときに顔色をうかがわなくなった
決断するときに、人の顔色をうかがわなくなった。
架空の、母の非難をおそれて、いつも冷や汗が出ていた。
たった、百円を使うだけでも、「こんなもの買って」と言われるのが怖かった。だから、いつも、買ったものを押し入れに隠していた。買ったものにケチを付けられるのがつらかった。押し入れに隠しているから、買っても、買った感覚がなかった。
頭の中で、こんなことはもったいない、馬鹿げている、という声がしなくなった。
そういうことにも気づかないくらい、自然に、しなくなった。そんなことがあったことさえ、忘れていた。