c71の一日

生活の記録

フラッシュバックについて

近頃は、嘘のようにフラッシュバックが起きなくなった。

夜も眠れるし、思い出さない。

夏頃には、毎日三回くらいフラッシュバックが起きていたので、一生こんな風だったらどうしようかと思ったものだった。

フラッシュバックが生活のほとんどを占めていて、自分のことをする時間もなかった。

だから、事件のことを恨んだし、犯人を呪ったし、何もかもが憎くて、苦しみの固まりだった。

フラッシュバック自体もつらかったけれど、それによって興奮していた。毛が逆立った猫のようだった。興奮し続けていたので、疲労していたのに、休めなかった。だから、いつも、ぐったりしていた。戦いながらぐったりしていた。

フラッシュバックが起きると、視力がとても落ちる。瞳孔が開いてしまうせいだ。だから、いつも、何もかもが見えづらかった。それも、もう解消した。
人と会うのも話すのも、信じられないくらい、だるくて、自分と事件を切り離して考えることができないから、無理矢理頭の中で切り替えていた。それにパワーのほとんどをとられていたので、溺れそうだった。だから、人と会うと、いつも疲れていた。

だけど、一人でいると良いかというとそうでもなかった。

暗いところが怖かったし、雨が怖かった。曇りの日が怖かった。日陰が怖かった。太陽光が怖かったし、湿った空気も怖かった。
事件を連想させるような物音には震え上がったし、入院してからも、近づけない一角というのは存在していた。
男性が恐ろしすぎた。怒鳴り声には硬直したり、座り込んだり、泣き叫んだりした。
入院中、言い寄られたときには、拒絶できなくて、触られるがままになった。

身を守ることができなくて、恐ろしい状態だった。

永遠に終わることがないと思っていた。

それでも、気がつかないうちに、頻度が減っていった。

一番良かったのは、仕事に就いたことだったと思う。
しかも、仕事が少しずつ増えていったこと、拘束時間が少なかったことも、幸いしていたと思う。
時期もちょうど良かった。
これが、正社員になっていたら、と思うと不安になるけれど、うまくやれた可能性もある。
やれなかった可能性もある。
それはやってみないとわからない。
(母親だったら、やってみてだめだったら良くないから養生しろと言っただろうと思う。それとも、なるなら、正社員になれと言ったかもしれない。そのへんはよくわからない。でも、今は、自分の意志で決められる。ポイントは、どちらの選択が良かったかじゃなくて、自分で決めた結果に満足しているということだったと思う。こういう風に、わたしが、今でも母親のことを考えてしまうところが、病気っぽいところだとも思う。離れていても、こんなに考えてしまうのだから、一緒にいるときは、自分が塗りつぶされていたと思う。自分のことがおぞましく思えるが、そこまで思わなくて良いとも思う)

わたしは仕事を辞めてから、することがなくなり、唐突なようだけど、水商売や風俗をすることも考えた。
仕事については、本当に思い詰めていた。
病気になると、唐突に思い詰めて、変な行動力がわく。
水商売をしている人が、施設にいたので、その人の話を聞いた。
その人はチーママで、お店を選ぶときのポイントや、面接のときの話をしてくれた。
明るい子が良いとは限らず、そのとき、癒す担当や、話を聞くのがうまい子、暗く見えても魅力がある子が欲しい場合もあるから、面接に行くいいよと進めてくれた。
逆に、年齢層が高いスナックで、あまりテンションが高くてもミスマッチだから、お店の雰囲気を見ればいいなどとアドバイスしてくれた。
キャバクラは向いてないし、お店の格も高くないし、給料もそんなに良くないから、スナックがいいよと教えてくれた。
スナックなら、お店の方針によって、女の子がお酒が飲めなくても雇ってくれるお店もあるとのことだった。ウーロンハイと誤摩化してウーロン茶を飲んでもいいと言っていた。

それも人と関わる仕事だから、悪くなかったと思う。
(ただし、アルコールに弱いとか、皮膚が弱いとか、男性が怖いとか、根本的な問題があった。だから、やっても、ストレスが多くて、仕事に救われるということはなかったと思う)

わたしのような境遇の人は、お金のこともあるだろうけど、わたしのような理由で、水商売や風俗に入る人は多いのだろうなと思った。
フラッシュバックがひどいと、事務作業や、座っている仕事、パソコンを使う仕事や、書類仕事がパニックになってだめになるのだ。
そして、人と関わる仕事は、なにか、自分を助けるようなところがある。
わたしは今まで接客をやったことがなかったので、今回のことで、それを初めて知った。

わたしは、たまたま、子どもを相手にする仕事をしているけれど、提供しているものは、重なる部分も多いと思う。
相手がほしがっているものを売るのだ。
それを臨機応変にするためには、心を使う。
心を使うとフラッシュバックが減るような感じがある。
フラッシュバックをなくすために一番役に立ったのは、時間と、安心できる場所だった。そして、薬が効いた。
薬が効いたので、わたしの体調の悪さがましになり、体調の悪さがましになることで、負の考え方を、肉体的な強さが超えることができた。
負の考え方が、少しずつ減って、毎日を過ごすうちに、生き方が変わった。
生き方が変わってから、生活習慣が変わり、昔を思い出すために使う時間が減っていった。
そして、フラッシュバックが減った。