c71の一日

生活の記録

空気を壊すことを恐れず逃げろ、そして戦え

発達障害と診断されてから二年経つ。薬が変わった。

死にたくならない。頭の中で声がしない。うるさくない。自問自答しない。


嘆かなくなった。

病院の先生が教えてくれたのは、「空気を壊すことを恐れず、人と距離を置くこと。ヤバいと思ったら退席すること」
強制する雰囲気というのは、脅威だ。たいてい、その雰囲気を作り出す人は、何か搾取しようとしている。対抗しようとしても無駄だ。相手の方が上手なのだ。

だから、自分を守るためには、その場から逃げるのが手っ取り早い。断ったり、理由を説明したり、していると、巻き込まれてしまう場合が多い。理由は、他の理由で説得されてしまう。断ると隙を見せることになる。大事なのは理屈じゃなくて、感情だ。そのときの直感だ。直感は、今までの人生で培って来た、すべての経験を代表して判断するものだから、どんなものよりも正確だ。獣のように生きなくてはならない。

自己肯定感が低いと、自分を守るためのモチベーションが保てない。なんのために、自分を守るべきなのかそもそもわからない。だから、また、傷ついてしまう。傷つくことを選択してしまう。それは、自分から、選択しているように見える。外からも見えるし、自分からもそう思ってしまう。だから、そのために、さらに自己肯定感を低くしてしまう場合がある。

けれど、本当は、傷つきすぎて、逃げ足が鈍くなっているだけなのだ。
自分から選択しているように見えても、そうではない。
あきらめや、卑屈や、疲れが、そうしているだけだ。


わたしは、自分が発達障害で良かったなあ、と思うことがいっぱいある。
空気が読めなくて良かったなあと思う。
空気にそれほど価値があると感じなくて済むから、自由でいられる。
空気を読めないことで、卑屈になった頃もあったけれど、今では、それは能力なのだと思える。
周りに足並みを揃えることに、力を注がずに済むから、マイペースでも、地道に、自分に必要な技術を身につけていける。そのことに、価値を見いだせない頃もあったけれど、今では強みだとわかる。遠回りは近道なのだ。
急いではことを仕損じる。



生徒に勉強を教えていると、空気を読む子は自分の能力を低く抑える。
卑屈なことが、能力の重石になる。


周りにどう思われるか。それに時間と力を割いてしまって、必要な分野が花開かない場合もある。
そして、卑屈だから、自分が本当はできることを怖がってチャレンジできない場合もある。
できないと最初からあきらめて、一生懸命やった結果ダメだったら傷つくと、恐れてしまって、問題に向き合おうとしない。それは卑屈だから。
周りに、頭が悪いと思われているから、自分にそんなことができるはずもないし、頑張って勉強しているとばれてしまったら、恥ずかしいから。


そんなことが、能力を伸ばすことの邪魔になってしまう。


周りの目を気にしすぎて、本質から離れてしまう場合がある。
大事なことが見えなくなっている場合があると思う。
悩むよりも先に、行動してしまう方がずっと楽なのに、それができなくなってしまう。
頑張った結果、できないことが怖いのだ。


それは欲があるからだ。
自分は本当は対した人間だと思いたい、できない自分と向き合いたくない。
できない自分と向き合わなくては、問題点もわからないのに。


わたしは、時間を無駄にしたと嘆いていた頃、わたしは過去ばかり見ていて、現在の自分を大事にしていなかった。卑屈になっていた。今の自分にできることがないと思っていた。


本当は違う。


ショックな出来事があって、自分には何も残されていないと思えるときでも、失敗して、恥ずかしい思いをしても、それまでに獲得した知識も技術もなんの意味もないような気がしても。すべてを失ってしまい、今までして来たことが何一つ役に立たないと思ったとしても。


その時点の価値観が変動してしまっただけで、本当は何も変わらないのだ。

生きていることさえ、意味がないと思っても。今生きていることが、今までの積み重ねで、何も間違ってはいない、必要な道筋だと諭されても、うまく受け取れない夜でも。



逃げてしまえば良い。その環境から。自分を罰する環境、嘲笑する環境から逃げて、自分を評価してくれるところを探してしまうのが手っ取り早い。そうすると、自己嫌悪から解放される。死にたくならない。

死にたいと言う感情は強力で重たくて、すべての力を吸い取ってしまう。すべての気力を無にする。
周りが自信を持たせてくれる人ばかりだったら、だんだん死にたくならなくなる。死にたいという気持ちから逃れられたら、いくらでも力を発揮できるようになる。




生きていたいなんてまだ思えない。


だけど死にたい、という気分にとらわれることもなくなった。
死にたい、と考えているのだと思っていた。でも、あれは死にたいという気分だったのだ。気分とは恐ろしいものだ。すべての感覚と思考の方向を支配する。軽んじることはできない。気分を変えることは自分では難しい。気分とは外部に近い。


周りの目を気にしない。自分のペースでしたいことをする。快適に暮らせる分のお金を稼ぐ。卑屈にならない。
それさえできれば人は集まる。集まらなくても平気になる。充実する。楽しくなる。
楽しくなれば、よりできることが増える。できることが増えると、自由になる。自由が増えると、新しい考えが生まれる。少し前の自分を振り返ることができる。振り返ることができると、昔の自分の悩みを解決できる。その周期が信頼できるようになれば、今現在の苦悩にこだわらずに過ごせる。


今まで、現在の自分が、過去の自分を助けて来たように、未来の自分がきっとうまくやってくれるだろうと、信じられる。