c71の一日

生活の記録

おかあさんと空気

空気読まなくてよかった、ってことたくさんあります。

だいたい、失敗したのって空気読んだとき。

空気読んでついていったらセクハラされたり性暴力にあった。


空気読まなかったからいじめられても死ななかった。空気読んだら死んでたよ。学校にも行ったよ。何が起きているかわからなかったけどつらかった。


おかあさんが毒親になったのは、もともとおかあさんに絶望があったからだと思うけれど、おかあさんの絶望にかなり長い間付き合ったものの、最終的には逃げ出せたのも空気を読まなかったからだと思う。心の中を相当侵略されていたけれど、病気という形で自分自身にシグナルを出せて、にげだすきっかけにできたから、わたしはえらかった。


おかあさんは、わたしを具合悪くするようなことをして、それから、わたしのケアをするのが大好きだった。そうやってやりきれない時間を過ごしているように見えた。
わたしの不幸を望んで、でも、幸せにもなってほしい、自慢もしたい、そんな感じだった。
おかあさんはアドバイスも大好きだった。予言も大好きだった。
世界をコントロールしたかったんだと思う。
自分が不安定だったから。
わたしは一番、コントロールしやすい人形だった。



おかあさんと、わたしは、違う、ってことを理屈立てて考えられたのは発達障害のおかげ。資質のおかげ。感情はあるんだけど、感情に思考は相当左右されるんだけど、理屈状正しいことしか採用しない、って部分があったから、最終的に逃げ出せたんだと思う。


アダルトチルドレンだから、顔色をうかがうところもあった。もともと発達障害だから、顔色をうかがう、っていう状態に相当のストレスがあった。でも、当時はそんなこと知らなかった。孤独でも本の世界に逃げ出すことができて、さみしくても、がまんができたのは、わたし自身の力だ。



わたしはきっと育てにくい子どもだったんだろうな。



だけど、それももう昔のことだ。今はおかあさんに幸せになってほしい。

ときどき懐かしく思うし夜になると夢に見る。おかあさんの作った料理のことを考えたりもするけれど、おかあさんには、わたしに関係のないところで幸せになってほしい。大人だからきっとできるはず。おかあさんにはその力がまだ残っているはずと信じたい。わたしはおかあさんのいるところでは幸せになれない。空気を読んだら、おかあさんを許して、きっと感動の対面をしてしまうのだろうけれど、わたしは空気を読まない。おかあさんに償ってほしいと自然と思わなくなった。今は毎日が忙しく、楽しい、つらいこともたくさんあって、おかあさんに関係のない物語が増えていくことに忙しい。

おかあさんが、幸せじゃないのは、おかあさんの吐く息のにおいでわかった。
体調が悪そうな、曇ったにおい。
おかあさんは、いつも、幸せだと言った。
あんたたちがいて、幸せだと言った。
わたしは、おかあさんを幸せにするために命がけで必死だった。
いつも苦しくて、お風呂場で泣いた。
いつまでも出ることができなくて、おかあさんにお風呂を覗き込まれた。



おかあさんは空気みたいなものだった。
おかあさんの気分を読むことが空気を読むことに等しかった。おかあさんはわたしのことを境界性人格障害だと思っていた。妹もそう思っていた。わたしは自分で当てはまらないことが多いと思っていた。そして、そう思うのなら、病院にかからせてほしいと思っていた。



わたしに輝かしいキャリアを望むくせに、おかあさんはその邪魔をし続けていた。成績優秀であることを望むのに、勉強の環境を与えない。わたしを子ども扱いし、茶化し、からかう。尊重しない。侵害する。



おかあさんは、「言わなきゃわからない」といつも言っていた。「言ってもわからない」とわたしは思っていた。おかあさんは都合の悪いことは忘れた振りをする。間違っていたとは言わない。


わたしはそれをひとつひとつ覚えていて、その石が心の中でたまって、重くてたまらなくなったときに、家を飛び出した。


何もかも頼れなかったわたしを受け入れてくれる人はいて、わたしは感謝したと同時に、少しは、わたし自身が築いて来た人間関係が、助けてくれた部分もあるんだと思って自信に感じた。



おかあさんは空気だけど、おかあさんの空気もわたしだった。だから、わたしに対してありがたみはないけれど、いつも束縛していた。


わたしの人生に嫉妬していたんだと思う。そして、おかあさんは、わたしの欠けているところを最後まで認められないでもいた。矛盾が、おかあさんの中でいくつもあったから、おかあさんは苦しかったんだと思う、そして、おかあさんは同時に、外面もよかったから、平気でいる顔をして、世間に対して嘘をついたし、わたしにも嘘を強いた。



わたしは間違ったパートナーを選び続けた。わたしは自分を大切にしないひとを好きになったり、好かれたりした。わたしは案の定傷ついたたびに、おかあさんのもとに逃げ帰った。
そして、安心な繭の中で窒息しそうになるたびに、パートナーを捜しにいった。



おかあさんを捨てたら、大切にしてくれるパートナーを選べた。わたしにこんな力があったなんて、と思った。

生温いおかあさんの吐く息のにおいを嗅ぐこともない。
おかあさんがいなくても、わたしは息をして、生きていられるんだと思った。


そこは広くて、空気が澄んだ冬の夜で、星が綺麗な場所。
わたしはたったひとりで、でも、ひとりじゃない。いつでも、ひとりを選ぶけれど、孤独ではない。
息を吐くと白くて、足音が響き渡る。それは自分のための音楽を奏でているようで、おばさんにもらった暖かいコートの色は、大好きな深いグリーン。わたしはとても幸せだ。